カルシウムとマグネシウムの拮抗作用

相互に作用して効果を打ち消し合う「カルシウムとマグネシウムの拮抗作用」についての解説です。

カルシウムとマグネシウムの拮抗作用とは?

カルシウムとマグネシウムは、どちらも必須ミネラルとして、私たちの体に重要な役割を果たしています。

拮抗作用の説明に入る前に、それぞれの体内における役割を確認しましょう。

カルシウムの役割

カルシウムは骨や歯の形成、血液凝固、神経伝達など、さまざまな生体機能に欠かせません。

  • カルシウム
    • 以下のようなさまざまな生体機能に不可欠
      • 骨や歯の形成
      • 血液凝固
      • 神経伝達など

マグネシウムの役割

マグネシウムは、エネルギー産生、タンパク質合成、細胞内外の水分バランスなど、300種類以上の酵素の働きを助ける補酵素として、さまざまな生体機能に関与しています。

  • マグネシウム
    • 300種類以上の酵素の働きを助ける補酵素として、さまざまな生体機能に関与
      • エネルギー産生
      • タンパク質合成
      • 細胞内外の水分バランスなど

カルシウムとマグネシウムの拮抗作用

カルシウムマグネシウムは、同じ輸送体を使って細胞内に取り込まれるため互いに拮抗作用(相互に作用して、その効果を打ち消し合う作用)を起こします。

具体的には、カルシウムの濃度が高いと、マグネシウムの吸収が阻害されます。

また、マグネシウムの濃度が高いと、カルシウムの吸収が促進されます。

  • カルシウム濃度が高い
    • マグネシウムの吸収が阻害される
  • マグネシウム濃度が高い
    • カルシウムの吸収が阻害される

カルシウムとマグネシウムの拮抗作用は、植物や動物の体内でも起こります。

植物では、カルシウムとマグネシウムのバランスが崩れると、葉っぱが黄色くなったり、枯れたりするなどの症状が起こります。

動物では、カルシウムとマグネシウムのバランスが崩れると、骨粗しょう症や高血圧などの健康問題を引き起こす可能性があります。

  • カルシウムとマグネシウムのバランスが崩れると
    • 以下のような健康問題を引き起こす可能性がある
      • 骨粗しょう症
      • 高血圧など

カルシウムとマグネシウムの拮抗作用を防ぐには?

カルシウムとマグネシウムの拮抗作用を防ぐためには、バランスの良い食事を心がけることが大切です。

カルシウムとマグネシウムが豊富な食品には、以下のようなものがあります。

これらの食品を組み合わせて、1日あたりカルシウム1,000mg、マグネシウム300mgを目安に摂取するようにしましょう。

  • カルシウム:
    • 摂取目安1,000mg/日
    • 豊富な食品
      • 牛乳
      • 乳製品
      • 小魚
      • 海藻
      • 大豆製品など
  • マグネシウム:
    • 摂取目安300mg/日
    • 豊富な食品
      • 緑黄色野菜
      • ナッツ類
      • 種実類
      • 全粒穀物など

また、カルシウムやマグネシウムをサプリメントで摂取する際には、両者の摂取量に注意が必要です。

カルシウムとマグネシウムの摂取量の比率は、2:1が理想的といわれています。

牛乳は「11:1」、プロセスチーズは「33:1」だそうです。

これらの食品を摂取する際にはマグネシウム不足にならないように気を付けましょう。

日本人の8割がマグネシウム不足!?

日本人の8割がマグネシウム不足だと言われています。

マグネシウムの推奨摂取量は男性で340~370mg/日、女性で270~290mgで、それに対して実際の摂取量は250mg程度なので、男女とも(特に男性が)足りていないことがわかります。

マグネシウムはビタミンB群(B1,B2,B6)が活動する際に必要な酵素の構成要素なので、マグネシウムが不足するとビタミンB群の働きが損なわれ、様々な不調の原因となります。

「天然塩」や「にがり」はマグネシウムが豊富!

「マグネシウムをコスパよく効率的に摂取する方法は無いかな?」と調べていて、「天然塩」や「にがり」にマグネシウムが豊富に含まれていることがわかりました。

「精製塩」を使っているという方は、少し高いですが、良質の「天然塩」に置き換えるとよいでしょう。

「にがり」は原液では濃すぎるので、料理や飲料に数滴たらしてお使いください。

マグネシウムは「酸化マグネシウム」として下剤にも使われますので、過剰摂取は下痢の原因となります。

酸化マグネシウム 塩化マグネシウム クエン酸マグネシウム の違い

酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、クエン酸マグネシウムは、いずれもマグネシウムの化合物です。

酸化マグネシウムは、マグネシウムと酸素の化合物で、化学式はMgOです。白色の粉末状で、水に溶けにくい性質があります。便秘薬や胃薬、下剤などに用いられます。

塩化マグネシウムは、マグネシウムと塩素の化合物で、化学式はMgCl2です。白色の結晶や粉末状で、水に溶けやすい性質があります。下剤や緩下剤、医薬品、工業用などに用いられます。

クエン酸マグネシウムは、マグネシウムとクエン酸の化合物で、化学式はMg3(C6H5O7)2です。白色の結晶や粉末状で、水に溶けやすい性質があります。サプリメントや食品添加物、医薬品などに用いられます。

それぞれの違いをまとめると、以下のようになります。

項目酸化マグネシウム塩化マグネシウムクエン酸マグネシウム
化学式MgOMgCl2Mg3(C6H5O7)2
白色の粉末白色の結晶・粉末白色の結晶・粉末
水溶性水に溶けにくい水に溶けやすい水に溶けやすい
用途便秘薬、胃薬、下剤下剤、緩下剤、医薬品、工業用サプリメント、食品添加物、医薬品

サプリメントとして摂取する場合は、便秘作用が強い酸化マグネシウムよりも、塩化マグネシウムやクエン酸マグネシウムの方が吸収されやすく、腹部の不快感などの副作用が少ないと考えられています。

便秘気味の人は下痢しない程度の量を摂取すると、簡易的な摂取量の目安になりますよ。

マグネシウムは皮膚から吸収される?!

マグネシウムは、皮膚から吸収される性質があります。

これを経皮吸収といいます。

経皮吸収によってマグネシウムを摂取することで、消化器を通さずに直接血液中に吸収されるため、胃腸への負担が少なく、効果が早く表れやすいというメリットがあります。

マグネシウムを経皮吸収する方法としては、以下のようなものがあります。

  • エプソムソルト入浴
    • エプソムソルトは、硫酸マグネシウムの結晶
    • お風呂にエプソムソルトを溶かして入浴
      • マグネシウムが皮膚から吸収される
  • マグネシウムオイルの使用
    • マグネシウムオイルは、マグネシウムを溶かしたオイル
      • マッサージや塗布することで、マグネシウムが皮膚から吸収される
  • マグネシウムパウダーの使用
    • マグネシウムパウダーは、マグネシウムを粉末にしたもの
      • お風呂に溶かして入浴したり、マッサージしたり、塗布したりする
        • マグネシウムが皮膚から吸収される

具体的な使用方法は、製品によって異なりますので、使用前に説明書をよく読んでください。

マグネシウムを経皮吸収する際には、以下のことに注意しましょう。

  • 敏感肌の人はパッチテストを行ってから使用
  • 皮膚に傷がある場合は使用を避ける
  • マグネシウムオイルやマグネシウムパウダーは目や口に入らないように注意

マグネシウムの経皮吸収は、マグネシウム不足の予防や改善に効果的な方法の一つです。

自分に合った方法で、ぜひ試してみてください。

マグネシウムと硫酸塩泉は関係あり?

マグネシウムと硫酸塩泉には関係があります。

硫酸塩泉は、温泉水1kg中に溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg以上あり、陰イオンの主成分が硫酸イオンのものです。

硫酸イオンは、マグネシウムイオンと結合して硫酸マグネシウム(芒硝)を形成します。

そのため、硫酸塩泉には、マグネシウムイオンが含まれていることが多いのです。

マグネシウムには、血圧の低下や鎮静作用、筋肉の緊張を和らげる作用などがあります。

そのため、硫酸塩泉には、これらの作用を期待できると考えられています。

また、マグネシウムは、骨や歯の形成、エネルギー代謝、神経伝達などにも重要な役割を果たしています。

そのため、硫酸塩泉を適度に利用することで、健康維持にも役立つと考えられます。

なお、硫酸塩泉の中で、マグネシウムイオンを多く含む泉質を「正苦味泉」と呼びます。

正苦味泉は、血圧の低下や鎮静作用が特に強いとされています。

具体的な効能としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 血圧の低下
  • 鎮静作用
  • 筋肉の緊張を和らげる作用
  • 動脈硬化予防
  • 脳卒中後の麻痺の回復
  • 皮膚の炎症を抑える作用

なお、硫酸塩泉は、飲用しても効果が期待できます。

ただし、飲用する際は、温泉の泉質や効能をよく確認してから行いましょう。

まとめ

カルシウムとマグネシムは、私たちの体にとって欠かせない栄養素です。

バランスの良い食事やサプリメントの活用で、両者の摂取量を適切に保ち、健康を維持しましょう。

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