コーヒーは抽出方法(挽き具合、粉の量、湯温、むらし、抽出時間・・・などの組み合わせ)によって無限の味が表現できそうです。
…とはいえ、「おいしい!」と言える範囲は限られるし、その中で好みの味を見つけ出したいですね。
良い豆を買ったとしても抽出の基礎知識がなければ、豆のポテンシャルを引き出せないかも⁉
では、酸味、甘み、苦味、雑味などをコントロールして好みの味を見つける方法を一緒に探しにいきましょう!
抽出パラメータと味わいの変化
ドリップしてみて、「もう少し苦味とコクと甘みを出したい」「豆の持つフルーティーなフレーバーを引き出したい」など、そのときの気分によって変えたい場合もありますよね。
「朝だから苦味とコク」「昼はクリーンに」「天気が悪いから軽くフルーティーに」・・・
そんなときに役立つように、抽出時のパラメータによって味がどう変化するかを表にしてみました。
抽出パラメータと味の変化表
注: この表は一般的な傾向を示しており、豆の種類や焙煎度によって結果は異なります。
表をシンプルにするために以下のキーワードを定義します。
- 「どっしり系」:濃厚で重たい
- 「しっかり」:苦味、コク、甘みが強調された味わい
- 「スッキリ系」:スッキリとした味わい
- 「さっぱり」:酸味、フレーバーを強調
パラメータ | 苦味 | コク | 甘み | 酸味 | フレーバー | 雑味 | 傾向 | 調整方法 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
挽き具合 | ||||||||
細挽き | ↗️ | ↗️ | ↗️ | ↘️ | ↘️ | ↗️ | どっしり系 | しっかり |
中挽き | ➡️ | ➡️ | ➡️ | ➡️ | ➡️ | ➡️ | バランスが良い | 標準的 |
粗挽き | ↘️ | ↘️ | ↘️ | ↗️ | ↗️ | ↘️ | スッキリ系 | さっぱり |
粉の量 | ||||||||
多め | ↗️ | ↗️ | ↗️ | ↘️ | ↘️ | ↗️ | どっしり系 | しっかり |
少なめ | ↘️ | ↘️ | ↘️ | ↗️ | ↗️ | ↘️ | スッキリ系 | さっぱり |
湯温 | ||||||||
高温 | ↗️ | ↗️ | ↗️ | ↘️ | ↘️ | ↗️ | しっかり | |
低温 | ↘️ | ↘️ | ↘️ | ↗️ | ↗️ | ↘️ | さっぱり | |
むらし | ||||||||
長め | ↗️ | ↗️ | ↗️ | ↘️ | ↘️ | ↗️ | しっかり | |
短め | ↘️ | ↘️ | ↘️ | ↗️ | ↗️ | ↘️ | スッキリ系 | さっぱり |
速度 | ||||||||
遅め | ↗️ | ↗️ | ↗️ | ↘️ | ↘️ | ↗️ | どっしり | しっかり |
速め | ↘️ | ↘️ | ↘️ | ↗️ | ↗️ | ↘️ | スッキリ系 | さっぱり |
時間 | ||||||||
長め | ↗️ | ↗️ | ↗️ | ↘️ | ↘️ | ↗️ | しっかり | |
短め | ↘️ | ↘️ | ↘️ | ↗️ | ↗️ | ↘️ | スッキリ系 | さっぱり |
ドリップの調整例
もっと「どっしり・しっかり」させたい(苦味とコクと甘みを強調)
- 粉の挽き具合➡細くする
- 粉の量➡多めに
- 湯温➡高めに
- むらし➡長めに
- 注ぐ速度➡遅めに
- 注ぐ時間➡長めに
もっと「スッキリ・さっぱり」させたい(豆の持つフルーティーなフレーバーを引き出す)
- 粉の挽き具合➡粗くする
- 粉の量➡少なめに
- 湯温➡低めに
- むらし➡短めに
- 注ぐ速度➡速めに
- 注ぐ時間➡短めに
ドリップコーヒーの味わいコントロール表
上の表で原理が分かったと思いますが、情報が多すぎてちょっと実用性に欠けていますね。
ということで、もっと実践的でわかりやすい表にまとめてみました。
目的別パラメータ調整ガイド
目的 | 項目 | 調整 | ポイント |
---|---|---|---|
苦味とコクと甘みを引き出す | 挽き | ➡細く | 「細挽き」ほど「しっかり」 |
湯温 | ➡高く | 「高温」ほど「しっかり」 | |
抽出時間 | ➡長く | 「長時間」ほど「しっかり」 | |
フルーティーなフレーバーを引き出す | 挽き | ➡粗く | 「粗挽き」ほど「さっぱり」 |
湯温 | ➡低く | 「低温」ほど「さっぱり」 | |
抽出時間 | ➡短く | 「短時間」ほど「さっぱり」 |
その他の調整項目
- むらし: 蒸らし時間を長くすると、苦味とコクが増す。
- 速度: ゆっくり抽出すると、苦味とコクが増す。
- 全体か一点集中か: 全体にお湯を注ぐと、バランスの良い味わいになる。一点に集中して注ぐと、苦味とコクが増す。
時間経過と抽出成分
コーヒーを抽出する際に、最初から最後まで同じように成分が溶け出しているわけではありません!
実は、溶けやすい成分から順にお湯に溶け出しているのです。
ではここで具体的に、時間の経過と抽出される成分の関係を見ていきましょう。
コーヒー抽出時には、以下のグラフのように時間の経過とともに「酸味」「甘み」「苦味➡雑味」の順に成分が抽出されていきます。
つまり、抽出時間をコントロールすることで「多く出したい成分」だけにフォーカスしてドリップレシピを考えることができるということです。
- スッキリとした酸味を際立たせたい場合
- 抽出時間を短くする
- 最後まで落とし切らず、ドリッパーを外す
- 酸味を抑えて、苦味とコクを強く出したい場合
- 蒸らしの湯量を少なめに
- 酸味を溶け出しにくい状態にする
- 蒸らす時間を長めに
- 酸味が抽出を抑え、甘み、苦味の抽出効率をUP
- 蒸らしの湯量を少なめに
コーヒー豆・購入失敗時のリベンジ法
「スーパーの安いコーヒー豆を買って失敗した~」という経験はありませんか?
スーパーの安いコーヒー豆の場合、焙煎から時間がたって香りが薄かったり、雑味が気になったり、「う~ん、どうやっても自分の好みの味にならない!!」(調整が難しい)場合があります。
「いっそのこと捨ててしまおうか?」と思っても、ちょっと待ってください!!
そんな時は(どうせ安い豆なので)量を多めに使い、抽出前半の(雑味が出る前の)おいしい部分を引き出す方向のレシピを検討してみてください。
雑味が気になる場合の調整
- 挽き目を粗め方向に調整してみる
- 合わせ技:味が薄い場合は粉の量を増やす
- 湯温を少し下げてみる
- 理由:湯温が高いと雑味が出やすいから
- 注ぎ方:「全体に」ではなく、「中心に」円を描くようにゆっくり注いでみる
- 全体に注ぐとフィルターが目詰まりして抽出時間が長くなる傾向がある
- この項目は、挽き目が細かいほど該当しやすい
- 全体に注ぐとフィルターが目詰まりして抽出時間が長くなる傾向がある
- 最後まで落とし切らずにドリッパーを外す
- 落とし切らなかった湯量分のお湯を足す
- 中挽き以上の粗さなら雑味が出にくい
- 確認して雑味がなければ落とし切りでもOK
- 中挽き以上の粗さなら雑味が出にくい
- 落とし切らなかった湯量分のお湯を足す
湯量に対して2倍の粉で抽出し、濃縮したコーヒー液を作り、倍量のお湯で差し湯(濃度調整)するくらいの大胆なレシピを試してみると良いでしょう。
抽出効率を上げずに、多くの粉から少量のポジティブな面だけを引き出し、ネガティブな面を捨てるイメージです。
- 質の悪い豆(※)は全般的に抽出効率を上げてしまうと「雑味・渋み」が出やすい
- ※:古くなった豆、保存状態が悪い豆、コモディティ等
- 対処法
- 豆を多く使う
- 挽き目を粗くする
- 短時間で淹れる
次の項目では、「おいしいコーヒー豆が手元にある」という前提で読んでくださいね。
絶対にやってはいけない!ドリップコーヒー失敗例集
同じ豆でも、淹れ方によって味わいが変わってきますが、「おいしい」と感じる範囲を超えると、残念な結果になりますよね。
おいしい範囲を超えないための「ガードレール=失敗例」を知ることによって、おいしく淹れるための各パラメータの範囲を知りましょう。
以下のグラフは「味への影響力」の割合(%)です。
まずは、「湯温」「抽出時間」「注ぎ方」「蒸らし時間」などを一定にして、味への影響力が高い「豆の挽き具合」を変化させるアプローチから始めてみてください。
◆豆の挽き具合(味への影響力:40%)
- 極細挽き
- 粉が細かすぎると
- お湯がうまく流れず、雑味が出てしまう
- 過抽出
- 粉が細かすぎると
- 極粗挽き
- 粉が粗すぎると
- 成分が十分に抽出されず、味気ないコーヒーになる
- 未抽出
- 粉が粗すぎると
◎丁度よい挽き具合を探るアプローチ
- 「中挽き」からスタート➡「細挽き」方向を試す
- まず雑味が許容できなくなるポイントを探る
- 挽き目を少し粗挽き側に戻す
- まず雑味が許容できなくなるポイントを探る
- 微調整できる項目
- お湯の落ちが悪い場合の対処法
- 静かにゆっくり注ぐ
- 激しく注ぐと微粉が暴れて目詰まりを起こす
- お湯が落ちきらないうちにドリッパーを外す
- 雑味が減り、クリーンになる
- 静かにゆっくり注ぐ
- 濃度が高すぎる場合の対処法
- 抽出後にお湯を少し足す(バイパス)
- 雑味が減り、クリーンになる
- 抽出後にお湯を少し足す(バイパス)
- お湯の落ちが悪い場合の対処法
◆湯温(味への影響力:30%)
- 熱湯
- 熱すぎるお湯は
- 苦味や雑味を引き出してしまう
- 熱すぎるお湯は
- ぬるいお湯
- ぬるすぎるお湯は
- 成分が十分に抽出されず、味気ないコーヒーになる
- ぬるすぎるお湯は
- 最近の品質の良い豆
- 高い温度でも雑味が出にくい
- 沸かしてすぐでも割とOK
- 高い温度でも雑味が出にくい
- 浅煎りの場合
- 成分が抽出されにくい
- 高めの温度で抽出効率を上げたほうが良い
- 成分が抽出されにくい
- アプローチ
- 高温のお湯から試してみる
- 雑味が気になる場合
- 雑味が気にならない温度まで下げる
- 雑味が気になる場合
- 高温のお湯から試してみる
- 温度計が無い場合
- 百均でも棒状温度計が売っている
- 秒数で毎回統一する
- 目安:例えば、沸騰後10秒放置すると約3度下がる
◆抽出時間(味への影響力:5%)
- 短時間
- 抽出時間が短すぎると
- 成分が十分に抽出されず、味気ないコーヒーになる
- 抽出時間が短すぎると
- 長時間
- 抽出時間が長すぎると
- 苦味や雑味を引き出してしまう
- 抽出時間が長すぎると
◆その他:注ぎ方(味への影響力:20%)、蒸らし時間(味への影響力:5%)
- 注ぎ方
- さまざまな抽出レシピを参考にすれば大きな失敗はない
- なんの予備知識もなしに注ぐと失敗する可能性が高い
- 傾向として
- 深煎り:静かに注ぐ(雑味を抑える)
- 浅煎り:少し強めに注ぐ(抽出効率を上げる)
- 蒸らし
- 20秒~40秒が標準
- 20秒:スッキリ(薄い?)
- 30秒:フルーティーな果実味
- 40秒:ストロング、(曇る?)
- 豆の状態にもよるが、30秒を基準に微調整する
- 20秒~40秒が標準
これらの失敗例を参考に、美味しいドリップコーヒーを淹れてください!
- せっかく買った豆の持ち味を最大限に活かすために目指すべきポイント
- 抽出効率をあげる
- ギリギリまで細挽き
- ギリギリまで高い湯温
- 嫌な雑味を抑える
- 抽出時間は3分以内を目指す
- 甘み、酸味、苦味などをバランスよく抽出する
- 注ぎ方を工夫する
- 抽出効率をあげる
参考になるドリップレシピ
上記のパラメータを試す際に、レシピを毎回同じにしないと訳が分からなくなります。
まずは、以下に紹介するレシピ通りに淹れてみて、それを基準にパラメータを一つずつ変えていくと良いでしょう。
V60 ULTIMATE TECNIC by James Hoffmann
4:6メソッド by 粕谷哲
かなり有名な「4:6メソッド」ですが、まずは書籍の紹介です。
Youtubeで「4:6メソッド」と検索するといくつも出てきますので視聴してみてください。
今後もいくつかの有名なレシピを追加していく予定ですので、お楽しみに。
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