アントワーヌ・ベシャン博士の説いた「環境仮説(宿主仮説)」の解説です。
環境仮説(宿主仮説)とは?
アントワーヌ・ベシャン博士の説いた環境仮説(宿主仮説)とは、病気の原因は細菌やウイルスではなく、体内環境の乱れにあるという考え方です。
- 環境仮説(宿主仮説)
- 病気の原因は細菌やウイルスではない
- 体内環境の乱れにある
ベシャンは、すべての生物に存在するミクロジーマという小さな粒が、体内環境が酸性になると細菌やウイルスに変化して、死んだ組織や毒素を分解するという理論を提唱しました。
この理論は、ルイ・パスツールの細菌説と対立し、歴史から抹消されてしまいましたが、現代の代替医療や自然療法に影響を与えています。
- ベシャンが提唱した理論
- すべての生物に存在するミクロジーマという小さな粒
- 体内環境が酸性になると細菌やウイルスに変化
- 死んだ組織や毒素を分解する
- 体内環境が酸性になると細菌やウイルスに変化
- すべての生物に存在するミクロジーマという小さな粒
- この理論は
- ルイ・パスツールの細菌説と対立
- 歴史から抹消されてしまったが・・・
- ➡現代の代替医療や自然療法に影響を与えている
ミクロジーマとは?
ミクロジーマ(マイクロザイム)とは、アントワーヌ・ベシャンが発見した、すべての生物に存在する極小の微生物だと言います。
ミクロジーマは、通常は細胞の修復や栄養を与える働きをしていますが、体内環境が酸性になると、細菌やウイルスに変化して、有害物質を分解するようになります。
ミクロジーマは現代の言葉で言うと、「エクソソーム」です。
- ミクロジーマ
- 現代の言葉で言うと「エクソソーム」
ベシャン博士の時代には「エクソソーム」という言葉もなく研究も進んでいませんでしたが、現代においては、エクソソームについての情報が以下のように得られます。
エクソソームとは?
エクソソームとは、細胞から分泌される直径50-150 nm(ナノメートル:10億分の1メートル)の顆粒状の物質です。
その表面は細胞膜由来の脂質、タンパク質を含み、内部には核酸(マイクロRNA、メッセンジャーRNA、DNAなど)やタンパク質など細胞内の物質を含んでいます。
- エクソソームは
- エンドソーム内に作られる膜小胞が細胞外に分泌されたものである
- エンドソームは
- 細胞内に取り込んだ物質を分解したり、細胞外へ排出したりするための経路
- エクソソームも
- エンドソーム経路を介して細胞外に分泌される
エクソソームは、細胞間のコミュニケーションに重要な役割を果たしていると考えられています。
エクソソームには、細胞の種類や状態を示す情報や、遺伝子発現を制御する情報などが含まれているため、他の細胞にこれらの情報を伝達することで、細胞の働きを調節すると考えられています。
エクソソームの研究は、近年急速に進展しており、その機能や病態との関連性について、さまざまな研究が行われています。
エクソソームの研究成果は、再生医療や創薬などの分野への応用が期待されています。
エクソソームの具体的な機能としては、以下のようなことが知られています。
- 細胞の種類や状態を示す情報の伝達
- 遺伝子発現の制御
- 免疫応答の調節
- 細胞の増殖や分化の促進
- 細胞死の誘導
エクソソームは、さまざまな種類の細胞から分泌されており、その種類や由来する細胞によって、含まれる情報や機能が異なります。
例えば、血液中のエクソソームは、がん細胞や炎症細胞から分泌されるものが多く、これらの細胞の状態を反映した情報を含んでいると考えられています。
エクソソームは、細胞間コミュニケーションの重要な役割を果たしており、その研究成果は、再生医療や創薬などの分野への応用が期待されています。
「ベシャン」対「パスツール」
ベシャンは、病気の原因は細菌やウイルスではなく、体内環境の乱れにあるという環境仮説(宿主仮説)を提唱しましたが、ルイ・パスツールの細菌説によって歴史から抹消されてしまいました。
しかし、パスツールは晩年、自身の説を修正し、ベシャンの説を認めました。
パスツールは、1861年に「自然発生説」を否定する実験を行い、その功績で「細菌学の父」と呼ばれるようになりました。
パスツールの実験
- 1861年パスツールの一連の実験
- 微生物が空気中から来ることを示した
- 口を曲げたフラスコ(特別に設計)
- ➡空気中の微生物が入らないように
- このフラスコに栄養液を入れて長期間放置
- 結果➡微生物が発生しないことを確認
- フラスコの口を開けた場合
- 微生物の繁殖が観察された
- 口を曲げたフラスコ(特別に設計)
- 結果➡生命が無生物から自然に発生するのではなく
- 既存の微生物から来ることを示している
- 微生物が空気中から来ることを示した
しかし、パスツールは、その後も「自然発生説」を完全に否定することはできず、微生物が空気中や土壌中に存在する「混合説」を主張していました。
一方、ベシャンは、1864年に「自然発生説」を完全に否定する実験を行い、その功績で「微生物学の祖」と呼ばれるようになりました。
ベシャンの実験は、パスツールの実験よりも厳密で、パスツールの説を完全に覆すものでした。
パスツールは、ベシャンの実験を認めた後も、自身の説を修正することはできず、混合説を主張し続けていました。
- パスツール
- 1861年に「自然発生説」を否定する実験を行い
- その功績で「細菌学の父」と呼ばれるようになった
- その後も「自然発生説」を完全に否定できず
- ➡微生物が空気中や土壌中に存在する「混合説」を主張
- 1861年に「自然発生説」を否定する実験を行い
- ベシャン
- 1864年に「自然発生説」を完全に否定する実験を行い
- その功績で「微生物学の祖」と呼ばれるようになった
- 1864年に「自然発生説」を完全に否定する実験を行い
しかし、1895年にパスツールが亡くなる前、彼は友人に「ベシャンの説は正しかった」と語ったと伝えられています。
パスツールが自身の説を修正し、ベシャンの説を認めた理由は、いくつかの要因が考えられます。
パスツールが自身の説を修正し、ベシャンの説を認めた理由
- ベシャンの実験は
- パスツールの実験よりも厳密
- 自然発生説を完全に否定するものだった
- パスツールの実験よりも厳密
- 晩年のパスツールは
- 科学者として、真実を追求する姿勢を貫いた
まとめ
アントワーヌ・ベシャンの環境仮説とルイ・パスツールの細菌説
この文章は、病気の原因に関する二つの対立する説、アントワーヌ・ベシャンの環境仮説とルイ・パスツールの細菌説について詳しく解説しています。
環境仮説は、病気の原因は細菌やウイルスではなく、体内の環境(特に酸性化)にあるという考え方です。
ベシャンは、すべての生物に存在するミクロジーマと呼ばれる微粒子が、環境が酸性化すると細菌やウイルスに変化し、体内の有害物質を分解すると提唱しました。
現代の言葉でいうエクソソームが、このミクロジーマに相当すると考えられています。
一方、細菌説は、病気を引き起こすのは特定の細菌やウイルスであるという考え方です。
パスツールは、有名な「白鳥の首フラスコ」実験を行い、微生物が空気中から発生することを示し、この説を支持しました。
歴史と評価
- ベシャンの説: 歴史的にはパステールの説に押され、あまり注目されませんでした。
- しかし、現代の代替医療や自然療法では、ベシャンの考え方が再評価されています。
- パスツールの説: パスツールの細菌説は、当時の医学に大きな影響を与え、ワクチン開発などにつながりました。
- しかし、晩年にはベシャンの説が正しいと認めたという証言もあります。
現代の視点
現代の研究では、エクソソームが細胞間の情報伝達に重要な役割を果たしていることが明らかになり、ベシャンの考え方が見直されています。
また、病気は単一の要因ではなく、遺伝子、環境、生活習慣など、複数の要因が複雑に絡み合って起こることがわかっており、ベシャンの環境仮説もその一側面を捉えていると言えるかもしれません。
まとめると
- ベシャンの環境仮説: 体内環境の乱れが病気の原因、ミクロジーマ(エクソソーム)が重要
- パスツールの細菌説: 特定の病原体が病気の原因
- 現代の視点: 両方の説に一理あり、病気の原因は多面的