アントワーヌ・ベシャン博士の説いた「環境仮説(宿主仮説)」の解説です。
環境仮説(宿主仮説)とは?
アントワーヌ・ベシャン博士の説いた環境仮説(宿主仮説)とは、病気の原因は細菌やウイルスではなく、体内環境の乱れにあるという考え方です。
ベシャンは、すべての生物に存在するミクロジーマという小さな粒が、体内環境が酸性になると細菌やウイルスに変化して、死んだ組織や毒素を分解するという理論を提唱しました。
この理論は、ルイ・パスツールの細菌説と対立し、歴史から抹消されてしまいましたが、現代の代替医療や自然療法に影響を与えています。
ミクロジーマとは?
ミクロジーマ(マイクロザイム)とは、アントワーヌ・ベシャンが発見した、すべての生物に存在する極小の微生物だと言います。
ミクロジーマは、通常は細胞の修復や栄養を与える働きをしていますが、体内環境が酸性になると、細菌やウイルスに変化して、有害物質を分解するようになります。
ミクロジーマは現代の言葉で言うと、「エクソソーム」です。
ベシャン博士の時代には「エクソソーム」という言葉もなく研究も進んでいませんでしたが、現代においては、エクソソームについての情報が以下のように得られます。
エクソソームとは?
エクソソームとは、細胞から分泌される直径50-150 nm(ナノメートル:10億分の1メートル)の顆粒状の物質です。
その表面は細胞膜由来の脂質、タンパク質を含み、内部には核酸(マイクロRNA、メッセンジャーRNA、DNAなど)やタンパク質など細胞内の物質を含んでいます。
- エクソソームは
- エンドソーム内に作られる膜小胞が細胞外に分泌されたものである
- エンドソームは
- 細胞内に取り込んだ物質を分解したり、細胞外へ排出したりするための経路
- エクソソームも
- エンドソーム経路を介して細胞外に分泌される
エクソソームは、細胞間のコミュニケーションに重要な役割を果たしていると考えられています。
エクソソームには、細胞の種類や状態を示す情報や、遺伝子発現を制御する情報などが含まれているため、他の細胞にこれらの情報を伝達することで、細胞の働きを調節すると考えられています。
エクソソームの研究は、近年急速に進展しており、その機能や病態との関連性について、さまざまな研究が行われています。
エクソソームの研究成果は、再生医療や創薬などの分野への応用が期待されています。
エクソソームの具体的な機能としては、以下のようなことが知られています。
- 細胞の種類や状態を示す情報の伝達
- 遺伝子発現の制御
- 免疫応答の調節
- 細胞の増殖や分化の促進
- 細胞死の誘導
エクソソームは、さまざまな種類の細胞から分泌されており、その種類や由来する細胞によって、含まれる情報や機能が異なります。
例えば、血液中のエクソソームは、がん細胞や炎症細胞から分泌されるものが多く、これらの細胞の状態を反映した情報を含んでいると考えられています。
エクソソームは、細胞間コミュニケーションの重要な役割を果たしており、その研究成果は、再生医療や創薬などの分野への応用が期待されています。
「ベシャン」対「パスツール」
ベシャンは、病気の原因は細菌やウイルスではなく、体内環境の乱れにあるという環境仮説(宿主仮説)を提唱しましたが、ルイ・パスツールの細菌説によって歴史から抹消されてしまいました。
しかし、パスツールは晩年、自身の説を修正し、ベシャンの説を認めました。
パスツールは、1861年に「自然発生説」を否定する実験を行い、その功績で「細菌学の父」と呼ばれるようになりました。
しかし、パスツールは、その後も「自然発生説」を完全に否定することはできず、微生物が空気中や土壌中に存在する「混合説」を主張していました。
一方、ベシャンは、1864年に「自然発生説」を完全に否定する実験を行い、その功績で「微生物学の祖」と呼ばれるようになりました。
ベシャンの実験は、パスツールの実験よりも厳密で、パスツールの説を完全に覆すものでした。
パスツールは、ベシャンの実験を認めた後も、自身の説を修正することはできず、混合説を主張し続けていました。
しかし、1895年にパスツールが亡くなる前、彼は友人に「ベシャンの説は正しかった」と語ったと伝えられています。
パスツールが自身の説を修正し、ベシャンの説を認めた理由は、いくつかの要因が考えられます。
- ベシャンの実験は、パスツールの実験よりも厳密で、自然発生説を完全に否定するものだった。
- パスツールの晩年は、健康状態が悪化し、研究に集中することができなくなっていた。
- パスツールは、科学者として、真実を追求する姿勢を貫いていた。