体液のバランスを整え、病気を治癒する「ルネ・カントンの海水療法」の解説です。
ルネ・カントンの海水療法とは?
ルネ・カントンの海水療法とは、フランスの生理学者ルネ・カントンが考案した海水療法です。
カントンは、海水には人間の体液とほぼ同じ成分が含まれているとし、海水を飲用することで、体液のバランスを整え、病気を治癒することができると考えました。
カントンの海水療法は、以下の3つの方法で行われるのが一般的です。
- 海水の飲用
- 海水の入浴
- 海水の吸入
- 海水
- 人間の体液とほぼ同じ成分が含まれている
- 人間の体液と塩分濃度が異なる
- 不純物が含まれている
- 不純物を取り除き
- 血液の濃度まで薄めた
次の項目で、海水と人間の体液の塩分濃度の違いを考慮しないと危険であることを確認しましょう。
【注意】海水を薄めずに飲むとどうなるか?
海水を薄めずに飲むと、体内の水分が塩分によって引き出され、脱水症状を引き起こします。
海水の塩分濃度は約3.5%ですが、人間の体液の塩分濃度は約0.9%です。
- 海水の塩分濃度
- 約3.5%
- 人間の体液の塩分濃度
- 約0.9%
海水(原液)を飲むと、体内の水分が海水の塩分濃度まで引き上げられようとします。
そのため、血液中の水分が細胞から出て血管内に集まり、細胞が水分を失って脱水症状を引き起こします。
- 脱水症状の主な症状
- 頭痛
- めまい
- 吐き気
- 嘔吐
- 倦怠感
- 筋肉の痙攣など
重度になると、意識障害や死亡に至ることもあります。
海水をそのまま飲むと、海水に含まれる塩分やミネラルが消化器官を刺激するため、嘔吐や下痢などの消化器症状も引き起こす可能性があります。
また、海水には細菌やウイルスなどの病原体が含まれている可能性があり、飲むと感染症にかかるリスクもあります。
海水を飲んで引き起こされる可能性のある症状は以下の通りです。
- 脱水症状
- 消化器症状
- 感染症
※海水をそのまま飲むことは危険ですので、絶対にやめてください。
海水を飲んでしまった場合は、できるだけ早く淡水で水分補給をしましょう。
また、脱水症状の症状が現れた場合は、早急に医療機関を受診してください。
海水を薄めた水を得るには?
海水をそのまま使用することは、感染症のリスクがあるため現実的ではありませんし、入手が困難ですよね。
そこで、天然塩を水に溶かして、海水を体液の塩分濃度に薄めた液体を作ります。
しかし、まず最初に塩の製法による成分の違いについて、ある程度理解する必要があるということをお伝えしておきます。
塩の種類と違いを理解していないと、健康になるどころか病気になる可能性がありますので、注意が必要だからです。
塩の種類と分類
塩は大きく分けて、精製塩と天然塩の2種類に分けられます。
- 精製塩
- 塩化ナトリウムが99.5%以上
- 科学的な製法で抽出
- ミネラルも取り除かれている
- 大量生産に適した工業製品
- 天然塩
- ミネラルが豊富で、塩辛さはマイルド。
- しっとりとした質感で、独特の風味や色合いを持つ。
- 大量生産には適していない。
天然塩はさらに分類可能です。
- 原材料による分類
- 海水塩:
- 海水から作られた天然塩
- 岩塩:
- 地中に堆積した海水が結晶化したもの
- 湖塩:
- 湖水が結晶化したもの
- 海水塩:
- 製法による分類
- 天日塩:
- 海水を天日干しして作った塩
- ミネラルが豊富に残りやすい
- 煮沸塩:
- 海水を煮沸して作った塩
- ミネラルが多少損なわれる
- イオン交換膜法塩:
- 海水をイオン交換膜でろ過して作った塩
- ミネラル分も濾過されてしまう欠点がある
- 天日塩:
どのような塩を選べばよいか?
カントンが「海水には人間の体液とほぼ同じ成分が含まれている」と語った言葉の上に、海水療法が成り立っていることから、海水の成分に近い塩を選ぶ必要があることが明らかです。
精製塩は海水から遠く隔たった科学的な塩化ナトリウム製品なので、カントン療法以前の問題として、生活から遠ざけるべきものだと認識してほしいと思います。
ミネラル豊富な天然塩は、たとえ取りすぎても余った分は体外に排出されるという説があります。
それには一定の根拠がありますが、ミネラル分の排出には限界があるため、過剰に摂取し続けると体内に蓄積されて健康に悪影響を及ぼす可能性があるので気を付けましょう。
- 「塩分の取り過ぎは体に悪い」
- 精製塩(人工的な塩化ナトリウム)には当てはまる
- 体内のミネラルバランスが崩れる
- ミネラル豊富な天然塩にはそのまま当てはまるわけではない
- 天然塩に含まれるカリウムの作用
- カリウムは
- ナトリウムと拮抗作用を示す
- ナトリウムの細胞内への蓄積を抑制
- 余分な塩分を体外に排出する働きを助ける
- (※しかし上記作用の限界を超えた過剰摂取はNG!)
- カリウムは
- 天然塩に含まれるカリウムの作用
- 精製塩(人工的な塩化ナトリウム)には当てはまる
天然塩はミネラルが残っているはずですが、原材料や製法によって、ミネラルの量やバランスが異なります。
それらを考慮した上でおすすめの天然塩は、海水塩をミネラルを残す製法で水分を取り除き、結晶化した製品です。
以下のような製品はミネラルが豊富でおすすめです。
商品名 | マグネシウム | カリウム | カルシウム | 合計 |
---|---|---|---|---|
宗谷の塩 | 3,320mg | 1,070mg | 930mg | 5,320mg |
雪塩 | 3,310mg | 1,000mg | 832mg | 5,142mg |
ぬちまーす | 3,360mg | 970mg | 700mg | 5,030mg |
手元に上記以外の天然塩をお持ちなら、成分表を見て比べてみてください。
紹介した天然塩が格段にミネラルを含んでいることがお分かりになるでしょう。
天然塩と水で作る「カントン水」
海水の飲用は、カントンの海水療法の基本的な方法です。
ミネラルを豊富に含んだ「天然塩」と水で「カントン水」を作りましょう。
- 水 500ml
- 天然塩 4.5g
「カントン水」の飲用には、以下の効果が期待されています。
- 体液のバランスを整える
- 免疫力を高める
- 疲労回復
- 便秘解消
ミネラルを豊富に含んだ天然塩は高価であるし、塩分を積極的にとることへの不安を感じるということもあるでしょう。
そこで次の項目では、安価な天然塩(ミネラルが少ない)と「にがり」を併用するという方法を提案したいと思います。
「苦汁(にがり)」とは?
まず、「にがり」とは?というところから始めていきます。
製造方法
にがりは、海水から食塩を生成した際に残った液体で、マグネシウムが豊富に含まれています。
海水から食塩を生成するには、天日採塩法や蒸発法などがありますが、いずれの方法でも、塩化ナトリウムが先に結晶化します。この結晶化した塩を収穫した後に残る液体が「にがり」です。
にがりの主な製造方法
海水から食塩を生成した際に、残った液体
- 海水から食塩を生成
- 塩化ナトリウムが先に結晶化(結晶化した塩)
- 結晶化した塩を収穫した後に残る液体が「にがり」
- 塩化ナトリウムが先に結晶化(結晶化した塩)
成分
にがりの主な成分は、塩化マグネシウムです。その含有量は、90%以上にもなります。その他にも、塩化ナトリウム、カリウム、カルシウム、硫酸塩、炭酸塩などの成分が含まれています。
メリット
にがりは、さまざまな健康効果が期待できると言われています。
その主なメリットは、以下のとおりです。
- 疲労回復
- むくみ解消
- 美肌効果
- 便秘解消
- 血圧上昇抑制
- 骨粗しょう症予防
注意点
にがりには、以下の点に注意が必要です。
- 過剰摂取すると、下痢や嘔吐などの症状を引き起こす可能性があります。
- 腎臓に疾患がある人は、医師に相談してから摂取するようにしてください。
- 妊娠中や授乳中の人は、摂取量に注意してください。
にがりは、海水から食塩を生成した際に残る液体を煮詰めて濃縮したもので、塩化マグネシウムを主成分としています。
疲労回復やむくみ解消などの健康効果が期待できますが、過剰摂取には注意が必要です。
以下の記事で、カルシウムの過剰摂取がマグネシウムを阻害する(逆もある)ことと、日本人はマグネシウム不足であることなどを解説していますので、ぜひご覧ください。
天然塩と「にがり」の併用
さて、「にがり」がミネラル豊富で塩分濃度が低い液体であることを理解していただいたでしょうか。
では、天然塩と水で作った「カントン水」に数滴の「にがり」を混ぜてミネラルの比率をアップさせましょう。
「にがり」はとても濃いので、一度にドバドバ入れてはいけません。
数日掛けて、「軟便や下痢をしてないか」などの体調不良がないことを確認しながら、徐々に増やしてみましょう。
マグネシウム不足が原因で便秘だった場合は、「にがり」の適量摂取で改善されるはずです。
お肌のトラブルにもマグネシウムは有効ですが、マグネシウムは経口摂取(皮膚から吸収される)が可能で、その方が効果的です。
次の項目で入浴による経口摂取を取り上げます。
海水の入浴
海水の入浴は、海水の浸透圧によって、体内に溜まった老廃物を排出する効果が期待されています。
また、海水のミネラルによって、肌の保湿や血行促進などの効果も期待されています。
しかし、実際の海水を沸かして入浴することは現実的ではありませんよね。
経皮吸収されて健康効果が高いとされるマグネシウムや、その他のミネラルを豊富に含んだ以下のような入浴剤を使用されるとよいでしょう。
また、入浴後やマグネシウムを補いたいときに以下のようなローションも併用すると良いでしょう。
さまざまな疾患の治療効果
ルネ・カントンの海水療法は、さまざまな疾患の治療に効果があるとされています。
具体的には、以下の疾患に効果があるとされています。
- アレルギー
- アトピー性皮膚炎
- 乾癬
- 関節炎
- 高血圧
- 高脂血症
- 糖尿病
- がん
「塩は体に悪い」という説について
塩は体に悪いという説は、1954年にGHQのダール博士が行った研究をもとに広まりました。
しかし、この研究は、高血圧の発症率が高い東北地方と低い鹿児島県の塩分摂取量を比較しただけで、他の要因を無視したものです。
また、近年の研究では、塩分摂取量と高血圧のリスクには関連性がないことがわかっています。
塩は、体に必要なミネラルであり、適量を摂取することは健康に良いと考えられています。
また、塩は、血圧を上げる直接的な原因ではありません。
むしろ、塩分を排出する機能を低下させるような生活習慣や病気が、高血圧の原因と考えられています。
塩を摂取する際には、精製塩ではなく、天日干しした自然の塩を摂取することをおすすめします。
精製塩は、ナトリウムだけが抽出された工業製品で、過剰摂取しやすいためです。
- 精製塩ではなく、自然の塩を摂取する。
- 塩の摂取量を気にする必要はない。
- 塩分を欲しがるときは、体に必要なサインである。
自然の塩や岩塩には、ナトリウムだけでなく、カリウムやマグネシウムなどのミネラルも含まれているため、適量を摂取することで、体に害を与えることはありません。
具体的な塩の摂取量の目安は、1日に6.7gから12.6gです。
ただし、これはあくまでも目安であり、個人の体質や健康状態によって適量は異なります。
また、味噌汁や漬物などの発酵食品にも塩分が含まれているため、これらも含めて総合的に判断するようにしましょう。
まとめ
ルネカントンの海水療法は、19世紀から行われてきた伝統的な海水療法です。
近年、日本でも大注目されており、健康増進や病気の予防・改善のために、多くの人が実践しています。
ただし、海水療法は、体調によっては副作用が出る可能性があります。
そのため、何かしらの疾病を持っておられる場合は、海水療法を始める前に必ず医師に相談するようにしましょう。